静岡自然を学ぶ会、会報100号のキセキ(軌跡と奇跡)

静岡自然を学ぶ会、会報100号のキセキ(軌跡と奇跡)
知る人ぞ知るその活動

2013.10.28工房だより, 雑記Comment (0) - Trackback (0)

工房Qの地元静岡には、知る人ぞ知る素晴らしい活動をしている会があります。
24年前に産声をあげたその会は「静岡自然を学ぶ会」と言います。
子育て中に身近な自然科学に興味を持った若いお母さんたちが立ち上げました。それから四半世紀近い間、途切れることなく現在にいたっているのは、会を運営する方々の好奇心、探究心のすごさを物語っています。スタート時9名だった会員数は他県にまで広がり、現在150名にもなりました。

静岡自然を学ぶ会が発行する手作りの会報は、会員から送られてくる数々の実験、発見、観察記録のほか、会が第一線の講師を呼んで開いたワークショップ報告が掲載されています。
子ども時代にやった自由研究を、学者ではない市井の大人がまじめにやっている。半ば無理やりにやっていた子どものころの宿題的自由研究ではなく、誰に強制されるでもない純粋な好奇心からの研究であり、まさに自由研究というにふさわしい活動になっています。
その会報が2013年10月号で100号となりました。たいへんにめでたいことです。自然科学分野で実績を伴ったこのような市井の活動は他には例はなく、奇跡的なことではないでしょうか。地元民として密かに誇りに思っております。

最近話題の富士山折り紙を発案したのも実は自然を学ぶ会の会員だ

その一方、ネット上では静岡自然を学ぶ会の情報はとても少ないです。
会が開設しているサイトはなく、会になんらかの接触を持った人による報告(会を絶賛するものばかり)が散見されるのみです。本当に知る人ぞ知る会なのです。

これはおそらく自然を学ぶ会が何よりもフィールドワークを大切にしていることの表れではないかと思うのです。
ネットで調べて分かったつもりになる、それではいけないよ、というような会の精神をそこはかとなく感じます。
だれもが知りうるネット上の情報は、有用でないことはないけれども、ある意味価値が希薄なのではないでしょうか。実際に見て触って自分の頭で考える、そうしたリアルな体験でしか知りえない情報の価値は、とても密度が濃く良質なものだと思います。録音された音楽を聴くことと、生演奏を聴いたり自分で演奏してみたりすることとの違い、印刷された絵画を見ることと、原画を観賞したり自分で絵を描いたりすることとの違い、そんなイメージを思い浮かべてみてください。

100号の目次
 
音楽、絵画といった芸術的活動は、プロではない一般の人々もやっていますが、科学実験は学者・研究者ではない一般の人はほとんどやっていません。静岡自然を学ぶ会はそれをいとも「自然に」やっています。誰がやってもいいんだということを教えてくれています。
そしてどこかの偉い人が既にやった実験をなぞっているのではないというところがすばらしい。それぞれがオリジナルな視点からオリジナルな疑問を持ち、オリジナルな実験や観察をしているんです。市販の実験キットなどは使わず、むしろ実験キットを自ら考案してしまうところにパワーを感じます。

活動は体裁を無理にカッコづけたりしていません。会報も気取った編集テクニックなどは使わない素朴な中身です。それは装飾より本質を大事にしている証拠でもあります。見かけでは伝わりにくい活動のすばらしさを何とか多くの人に知ってもらいたいと思っています。

いや、これからもずっと「知る人ぞ知る」会のままかもしれません。
この文章を読んだ人が「知る人」の仲間入りをはたすきっかけになればいいなと思い、記しました。2年前に知る人の末席に加わった者として・・・。

100号に付いていた記念絵はがき。表紙絵を手掛けるHIDEYO TANIKAWAさんによるもの